明け方


見失った夢は
明け方の月
きっと常に
心を照らしていたはず
現実に怯えるように
しゅぱっと痺れる水に顔をつける
かわいたタオルは
皮膚を赤くこする
書きかけの詩が
手付かずの日記に変わり
光がうっすらさすまでに
庭先で
鳥の巣に羽音がひとつふたつざわめく 

あたたかい声が
誰にも見つからないように
かすかな音符を発している

やわらかい霧の林に
何者かの駆けぬける気配

むなさわぎが
薄明るい交差点で立ち止まる
はじまろうとする
白い息の明滅

水のように
ひとすじの風が
うねる
木の床をみしっと鳴らして
誰か階下へ降りて行った

【投稿者】 星粒

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