祭り

 

橋 橋 橋の町に神輿が来る

 

見えない大波がざぶんと寄せる

路次は影一つなく 鉄板のように光り

神輿が来るのをまっていた

 

紺色の半纏をずぶ濡れにして

空まで掛け声が反射する

それは嵐のようだ

おぼつかない足取りの子供は

吹き飛ばされないように

路上へ出してはならない

 

太陽がくわっと照り付け

とうとう無数の掛け声が

大蛇のように踊り狂いながら

狭いところに

押寄せてくる

 

じいちゃん!

甲高い幼子の声がわたしの咽喉から

不意に搾り出される

ずんぐりしたごま塩頭が

鉢巻を巻いてこちらを振り向いた

 

沿道の人々がホースや盥で

担ぐものに水をかける

じゅわっとしぶきの中に

じいちゃん!

という声が花火のように割れてゆく

 

少しずつ掛け声の波は引いてゆく

人の生命の高揚も

その夏の

波にさらわれていったまま

じいちゃん!

久しく呼んだことのない言葉は

潮騒のように耳元で鳴響いている

【投稿者】 星粒

*投稿作品のindexに戻る*