しごと

 

日のあるうちに
大きさも不揃いの布地を干す
ゆびさきは淡雪に透けて
そこからひとすじの今日の光を宿す
若い頃の洒落た靴は古びて
すみれいろのうつくしいスーツも
いつしか迷宮のシルエットとなり
わたしの衣裳戸棚に消失した
指輪をうしなったあとに
ちいさくやわらかな幼い指が巻き付いて
しばらくすると
指紋は あぶらをおとす溶液で
うすい皮さえめくれはじめていった

うつむく姿勢のまま
そうじきをかけて
わたしはじぶんの影の微塵まで吸い取った

壁にはりついたり
玩具の箱によりそっていた小人の影も
とまったアラームとともに
時のおろしがねで
きれいにすりおろされて
まっしろなへやだけがここにある
 

すこしでかけるために
薔薇をまねて紅をさすと
忘れていた忘却の花畑が
あまくひそやかにかおりはじめる
ピアノの上に飾ったフランス人形を
夜になったら
入浴させなければ 煤を着ているようだ

後悔はいくつも
ほこりのようにうっすらと積もっている
家庭というひとつの
終わりのない仕事の為に

 

 

 

 

【投稿者】星粒

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