あの時の少年。

  

  「ふぅ、こんなところかな。」
  あらかた荷作りの終わった部屋で彼女はようやく一息ついた。
  明日からは新居での2人暮しが始まる。
  二十数年暮らしてきたこの部屋とも今日でお別れとなる。

  ざっと部屋を見渡すと隅にある押入れに目をやった彼女は
  子供の頃を思い出した。

  「小さい頃はこの中で眠ったりして、
  よく母さんにおこられたっけなぁ。
  ここで眠ると決まって同じ男の子が現れて
  よく一緒に遊んでいる夢を見たっけ。
  ビーズで作った指輪をあげた事もあったなぁ。
  そのことを母さんに話したら「「夢の話ばかりしてないで
  しっかりしなさい!」って凄く怒られてそれ以来、
  押入れで眠るのをやめたんだっけ。」

  彼女は今日までそこで生活していたのに、
  なぜか妙に懐かしさを感じた。
  ふと気が付くと押入れの隅には
  ビーズで作った指輪が転がっていた。
  彼女はそっと指輪を拾い上げると
  それを握り締めたまま部屋を出て行き

  「またいつか遊びに来るからね。」
  そう言うと部屋の扉を静かに閉めた。

【投稿者】 manzou

*投稿作品のindexへ戻る*