鼓動

 

 


胸にシンバルが鳴っているのだ
確かに
老人にも赤ん坊にも小犬にも雀にも
只他の騒音がかき消すから
わたしは時折生きているのか否かを
わすれはててしまう

さっき飲んだ薬の数さえ忘れてしまい
買おうとして出たはずのショッピングで
何を買うのか忘れ
洗濯バサミみたいなチンケなものを買って
帰路にふと立ち止まり思い出す

そんな有り触れた循環のなかで
金魚のように喘いで生きているだけだけれど
其れでも
胸のシンバルは鳴っているんだ

何処に?
其処にーー

少女のふくらみかけたちいさな花の房に
宿題を忘れて真っ赤に上せあがった
緊張した子供の速まる脈拍にーー
遠い日のアルバムに戻らぬときを嘆く
震える女の心にーー
帰宅が早いと嘆かれるから
赤提灯の引き戸をあける
サラリーマンの項垂れた心に、

鼓動は
鳴り響いているんだ
わすれてはいても
飛行機の音色が空をつんざこうと
わたしたちは  生きているんだ

 

 

 

 

【投稿者】 hoshitubu

*投稿作品のindexへ戻る*